脂質異常症(高脂血症)は、動脈硬化を引き起こし、心筋梗塞や脳梗塞などの原因となります。特に心筋梗塞などの冠動脈疾患の既往がある方は、リスクが高いので厳格なコントロールが必要です。動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版では、LDL-C 100mg/dL未満、non-HDL-C 130mg/dL未満が目標とされています。さらに家族性高コレステロール血症、急性冠症候群、糖尿病の合併がある方は、LDL-C 70mg/dL未満、non-HDL-C 100mg/dL未満が目標です。
糖尿病、非心原性脳梗塞、末梢動脈疾患(PAD)、慢性腎臓病(CKD)の方も高リスクであり、LDL-C 120mg/dL未満、non-HDL-C 150mg/dL未満が目標です。
その他病態に応じて、中リスクの方はLDL-C 140mg/dL未満、non-HDL-C 170mg/dL未満、低リスクの方はLDL-C 160mg/dL未満、non-HDL-C 190mg/dL未満が目標とされています。
脂質異常症の代表的な治療薬には以下のようなものがあります。
コレステロールは小腸から吸収されるものと、肝臓で合成されるものがありますが、スタチンは肝臓でのコレステロール合成を抑えることにより、LDL-Cを低下させます。加えて、血管内皮機能改善、心筋保護、抗炎症作用など多面的な抗動脈硬化作用(プレイオトロピック効果)が知られています。
狭心症や心筋梗塞などの発症や再発を減らすことが証明されており、脳卒中に対する効果も示されています。高LDL-C血症に対する第一選択薬です。
筋肉痛などの副作用が生じることがあります。妊娠中、妊娠の可能性のある方は服用できません。
■小腸コレステロールトランスポーター阻害薬(エゼチミブ)
小腸からのコレステロール吸収を抑えることにより、LDL-Cを低下させます。
■多価不飽和脂肪酸
高純度の魚油から精製された、イコサペント酸(EPA)および、ドコサヘキサエン酸(DHA)製剤です。魚肉を多く摂取するグリーンランド在住民族に、動脈硬化性疾患が少ないという疫学調査結果が開発の発端となりました。主に中性脂肪(TG)を低下させます。
■フィブラート系薬
肝臓での中性脂肪(TG)合成を抑制すると共に、HDL-C増加作用もあります。
以前は原則としてスタチンとの併用はできませんでしたが、現在は注意のうえ併用することが可能となっています。ただし、腎機能が悪い方は注意が必要です。
出典:動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版(日本動脈硬化学会)、脂質異常症診療ガイド 2018年版(日本動脈硬化学会)
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