糖尿病の合併症は、3大合併症の、腎症、網膜症、神経症や、大血管症と呼ばれる心筋梗塞、狭心症、脳高梗塞、末梢動脈疾患などが有名です。実はその他にも多くの病気が糖尿病と関係していることが知られており、がんもその一つです。
一般に、糖尿病は、大腸がん,肝臓がん,膵臓がん,乳がん,子宮内膜がん,膀胱がんなどのリスク増加と関連があります。特に日本人では、大腸がん,肝臓がん,膵臓がんのリスクを増加させることが明らかとなっています。
血中インスリンの増加、高血糖、慢性炎症などが関係しています。
糖尿病の方の多くは血中インスリン濃度が高く、過剰なインスリンは、細胞増殖の誘導、アポトーシス抑制などのがんの発生・進行につながる変化を誘導すると考えられています。ただし、治療に用いる注射のインスリンに関しては、発がんとの関連は否定されています。
高血糖は、酸化ストレスを亢進させ、DNAの修飾・変異を起こし、がんの発生率増加や腫瘍の増大に関わります。
肥満では脂肪組織に慢性炎症が生じることが知られています。慢性炎症はがんの発生に関与することが知られており、肥満を伴う糖尿病の方は、慢性炎症によりがんのリスクが高まります。また、抗炎症作用を持ち、がんを抑制する働きをもつアディポネクチンという生理活性物質も、肥満や糖尿病があると低下するため、慢性炎症の悪化につながります。
食事、運動療法、禁煙、節酒が、がんリスク減少につながる可能性があるとして推奨されています。食事は適切なカロリーで、赤肉・加工肉の摂りすぎを控え,野菜・果物・食物繊維を多く摂る。適度な運動をする。タバコは一切だめ。飲酒は一般的に適度ならOKです。
一般に、がん検診は、胃がん、大腸がん、肺がん、子宮頸部がん、乳がん検診が推奨されており、糖尿病の方も,性別・年齢に応じて適切に科学的に根拠のある癌のスクリーニングを受診するよう推奨されています。
特に糖尿病の方は、膵臓がんなどで、がんが発生したことにより糖尿病の発症、悪化を来す場合もあり、血糖コントロール悪化や、体重減少などの問題がある場合は、それに応じた対応が必要です。
通院中の方は、胸部レントゲン検査、上部・下部消化管内視鏡検査、便潜血検査、腹部超音波検査などを、必要に応じて適宜受けていただくことをお勧めいたします。
出典:糖尿病とがんに関する委員会報告 糖尿病56(6):374~390,2013
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