糖尿病治療薬には、内服薬や注射薬など様々な種類があります。GLP-1受容体作動薬は、注射薬の一種です。
GLP-1とは、インクレチンというホルモンの一種で、膵臓から血糖を下げるインスリンの分泌を促進したり、血糖を上げるグルカゴンの分泌を抑制することにより、血糖を低下させます。GLP-1には、このほかに食欲を抑えたり、胃排泄遅延、心保護などの作用もあり、多面的な血糖降下作用に加えて抗動脈硬化作用も期待されます。空腹時血糖値、食後血糖値の両方を低下させます。
通常糖尿病治療は内服薬から開始することが多いのですが、内服薬だけでは十分な血糖改善が得られないことがあります。GLP-1受容体作動薬は内服薬と併用が可能であり、内服治療で不十分な場合の、次の一手として有効です。インスリン注射とも併用できます。
血糖降下作用のみならず体重減少作用もあり、収縮期血圧の低下や、脂質改善効果、脂肪肝の改善なども報告されているため、メタボリックシンドロームを合併している場合などが良い適応と考えられます。2型糖尿病治療薬で、1型糖尿病の方には使用できません。
GLP-1受容体作動薬は、自己注射(自分で注射する)薬です。いろいろな種類があり、1日2回注射するものから、週に1回のものまであり、効果も多少異なります。
皮下注射といって、お腹や太ももに注射します。決して難しくはありません。針も細く、血液検査や静脈注射などと比較し、刺す際の痛みもわずかです。
自己注射薬の処方を受ける場合、月1回、自己注射指導管理料という料金が発生します。2019年10月現在の試算ですが、週1回の注射の場合は、3割負担の方で1,950円、1割負担の方で650円です。反面、診療所では特定疾患療養管理料が不要となるため、通院回数により異なりますが、おおよそ3割負担の方で、680~1,350円、1割負担の方で、230円~450円の負担減となります。
診療所での差し引きの負担増は、3割負担の方で1,000円前後、1割負担の方で300円前後となります。薬の費用は、週1回のトルリシティという注射の場合、薬価が1本3,462円ですので、月に4本打つとして、おおよそ3割負担の方は4,150円、1割負担の方は1,390円となります。
以上より、トータルの月額の費用は、3割負担の方は5,000円程度、1割負担の方は1,700円程度です。安価ではありませんが有用性は高く、費用対効果は優れていると思います。
出典:糖尿病治療ガイド 2018-2019, 日本糖尿病学会、糖尿病診療ハンドブックVer.4, 中外医学社
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