原発性胆汁性胆管炎(Primary Biliary Cholangitis: PBC)とは
聞きなれない病名ですが、慢性肝疾患のひとつです。自己免疫が関連していると考えられています。肝臓の中で胆汁の流れが悪くなる病気で、肝機能異常や、進行すると痒みや黄疸(白目や皮膚が黄色くなる)などの症状を起こすことがあります。本邦では患者数5~6万人と推計されています。比較的まれな疾患とされていましたが、当院でも年間何人か見つかります。患者数は増えているようで、診断されていない方も多いのかもしれません。
■ 無症候性PBCと症候性PBC
かつてこの疾患は、原発性胆汁性肝硬変と呼ばれており、肝硬変になってから発見されることの多い病気でした。現在は、肝硬変まで至っている方は10%程度といわれています。多くの方はまったく症状の無い無症候性PBCです。痒みや、黄疸などの症状があるものが症候性PBCと呼ばれます。
無症候性PBCは予後良好ですが、10年の経過で25%が症候性へ移行します。
■ PBCの診断
肝機能異常の中でも、特にALPやγGTPといった、胆道系酵素と呼ばれるものが上昇しているとPBCが疑われます。抗ミトコンドリア抗体(AMA)というPBCに特異的な抗体陽性や、免疫グロブリン(IgM)の上昇、その他総合的な所見より診断します。シェーグレン症候群、関節リウマチ、慢性甲状腺炎などの自己免疫性疾患を合併することがあります。自己免疫性肝炎(AIH)を併せ持つ、PBC-AIHオーバーラップ症候群という病態もあります。
■ PBCの治療
ウルソという薬を飲みます。ウルソは、肝機能(ALPやγGTP)の数値を改善し、肝臓の内部の組織を改善し、病気の進行を抑えることが確認されています。
ウルソは、標準的には1日600㎎を服用し、必要な場合900㎎まで増量します。
症候性PBCでは、痒みや骨粗鬆症などの合併症対策が必要となります。肝硬変への進展や、食道静脈瘤、肝がんの発症にも留意する必要があります。
*出典:原発性胆汁性胆管炎(PBC)診療ガイドライン(2017年)、公益財団法人難病医学研究財団/難病情報センターホームページ、原発性胆汁性胆管炎(指定難病93)
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